教養・哲学

【初心者のための哲学】-正義の教室 善く生きるための哲学入門

哲学

難解な哲学の話しはない

哲学にはどのようなイメージを持っていますか?

凄く昔の古い話。

小難しく理屈っぽい。

頭の中だけの空想の産物で全く実用的ではない。

ただただ嫌悪感を覚える。

教養として身に付けたいけど取っつきにくい。

人によって色々な理由があると思います。

もちろん専門的に学んだり分厚い何百冊もの書物を読んできた人もいるかもしれませんが、中々そこまでどっぷり浸かっている方は少数だと思います。

哲学という名前は知ってるけど具体的にどんな学問なのか知らない、という方にはぴったりだと思うのがこちらの書籍です。

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哲学と聞くと難解で難しくてさっぱり分からない、一部の変わった方だけのもの、と思われるかもしれません。

少し前に流行ったNHKで放映されたマイケル・サンデル教授の白熱教室で「正義とは何か?」を題材にした哲学的な内容はご存知の方も多いと思います。

全く一緒という訳ではありませんが、それに近しい内容の話しが本書には登場してきます。

本書を購入した時についてきた帯のコメントのはこう書いてあります。

30人の幼児と自分の娘、どちらを助ける?

「抜群に面白い。サンデル教授の正義論よりもずっとためになる」佐藤 勝、絶賛!

このように書いてありました。

私はマイケル・サンデル教授の書籍に2冊程読み、面白いと感じたし、良い思考訓練にもなったと思いました。

しかしそのマイケル・サンデル教授のそれよりもずっとためになると佐藤さんが仰っている、それに目が止まって迷わず即購入し読み始めました。

本書「正義の教室 善く生きるための哲学入門」は物語形式で「正義とはなんなのか?」

この一点について語られています。

主な登場人物は男子生徒1名と女子生徒3名、そして倫理の授業を行う1名の先生です。

この5名が授業を通して「正義」とは一体どのようなもので、人々が立つ立場や主張にはいくつかの考え方に立脚し分類されるというところから始まり、それぞれの意見やそこから発生する弊害などについて対話形式で繰り広げられて行きます。

哲学の話しなのに非常にわかりやすい

まず本書の特徴としては、難しいと捉えられてしまうことが多い哲学という学問を、ここまでわかりやすくて噛み砕いて実生活に照らし合わせているから、受け入れやすくわかりやすいという点が挙げられます。

身近な題材かどうかは初心者やこれから学ぼうとする入門編では非常に大切なことです。

そしてわかりやすくしているもう一つのポイントは「対話形式」というところです。

プラトンが書いた「ソクラテスの弁明」やソクラテス自身も市民との対話によって哲学の本質や核心を炙り出し迫って行くという手法をとっています。

本書も登場人物がそれぞれの主義を主張試合、その理由や反論を唱えたりと行った会話を中心としたストーリー形式で進んで行きます。

これが、哲学という少し敬遠してしまいそうなジャンルを題材にしているにも関わらず、受け入れやすくしている理由だと思います。

本当にわかりやすい。

私が思うくらいですから本当に。

「正義」には絶対的な唯一の答えはあるのか?

この「正義」というキーワードだけに絞って本書では300ページ以上に渡って考察していきます。

中々難しい問題ばかりでおいそれと簡単に答えは出せないものばかりです。むしろ問題と言ってしまっていいのかさえ危ういです。

問題には必ず答えがあるものです。

しかし本書に出てくるその問題の数々は万人が納得のいく共通解は見当たりません。

その一つ一つを本当に真剣に考えていたら一生かかっても時間が足りません。

普段は「正義」についてここまで深く腰を据えて考えることはないと思います。なんとなく漠然とこういう時はこれが正義でしょ、と。常識的に考えてそれは正義でこれは悪でしょ、と。普通の人はそんなように思っていることと思います。

数百年、数千年前の人々がどのように「正義」を考えてきた、そしてその概念をなんというのかと言った教養的な内容も体系的に本書では学ぶことができます。

もし詳しくここで示されている考え方や哲学者の思想に触れたいのであれば、個別に本書から派生していきどんどん読んでいき知識を増やして行くのも面白いと思います。

本書を読み終えるとあなたにとっての「正義」という概念が少し変わってしまうかもしれません。もしかすると更に強固な考えとして定着するかもしれません。どのように転ぶかは正直わかりませんが、なんらかの変化が生まれることと思います。

人間には様々な考え方やロジック(論理)があります。

それぞれは相容れないかもしれませんが、相手がどんな考えのもと、そのような結論に至ったのかを知っているのと知らないのとでは全く違います。

納得はできないかもしれないけど、歩み寄ったり、妥協したり、すり合わせをしながら、今よりも世界がほんの少しでも善い方向に動かしていくことはできるかもしれません。

有名なトロッコ問題だけではなく、日本の社会福祉の問題、環境問題などあらゆる場面でもこの「正義」という概念が根っこにはあります。

誰もが幸福になる施策や社会を実現することは実現不可能と思えるかもしれませんが、放棄はせず、その時代、社会的背景によって変えていかなければならないかもしれません。

また私たち一個人も自分が考えう善い行いとはなんなのかを考えて、自分なりの結論を出して行動して行くことには非常に意味があることだとも思っています。

そしてこれこそが正に今一番大切だと思ったのですが、これからはAIの時代がやってきます。効率性を重視し最適解をプログラムされたICチップが膨大な計算の末一瞬で結論を提示する時代です。

そんな時に、絶対的な正義がない答えのあってないよう問いが発生した場合、それは大きな問題や小さな問題様々ですが。

このような場面が発生した時にAIに判断を委ねてしまうのか、一人一人その時に思う正義を選択するのか。非常に重要な問題だと思いますし、正にその時こそ人間が必要で代替不可な存在になってくるのではないかと考えさせられました。

久しぶりに頭を使って集中して読んでしまいました。

冒頭にも書いたように非常に理解しやすくストーリー仕立てなのでどんどん読むことができてしまいます。

あまり多くの纏まった時間が取れないかたも、すきま時間を見つけてその都度本書を開く習慣をつければ、そこまで多くの時間がかかることもないでしょう。

ほんの少しかもしれませんが、初心者、初学者でも哲学のなんたるかがわかると思います。

いや、そもそも哲学に初心者も初学者もないのかもしれません。

普段この手の書籍を読まないかたにも読んで欲しいなと思った一冊でした。

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