
東野圭吾作イヤミス短編7作品
イヤミスというジャンルに当たるかはよくわかりません。なんせ「イヤミス」という言葉を知ったのはつい先日の事だからです。だから本当の意味をよくわからないのですが、恐らく文字から察するに嫌な気分、気持ち、ちょっと暗い、読了後にスッキリしないミステリ小説の事を「イヤミス」と呼ぶのだろうと。
だからタイトルに「イヤミス短編集」と題しました。もし全く見当はずれのお門違いのポンポコピーのポンポコナーのちょうきゅうめいのちょうすけであればごめんなさい。
という事で今回読んだのはこちらの東野圭吾さんの作品「犯人のいない殺人の夜」です。
タイトル:犯人のいない殺人の夜 (光文社文庫)
著者:東野 圭吾
タイトルの「犯人のいない殺人の夜」は本書の最後に掲載されている短編作品の一つ。他の掲載作品も合わせて下記の通りです。
・小さな故意の物語
・闇の中の二人
・踊り子
・エンドレス・ナイト
・白い凶器
・さよならコーチ
・犯人のいない殺人の夜
どの作品も人の「死」に関係するのですが、どれもこれもいや〜な気分にさせられます。特に「闇の中の二人」と「踊り子」でしょうか。
これまた書くとネタバレになってしまうのでもどかしいのですが、「闇の中の二人」は赤ちゃんが殺されてしまいます。もうこの時点で最悪の雰囲気が漂うのですが、真相が最低です。最低というのはどこに焦点、重きを置くのかによって変わってきますが、後味が悪い。
イヤミスだから後味が悪いのは仕方ない。仕方ないのだけれども、ただただ嫌な気分にさせられます。よくこういう作品が書けるものだと関心しますが、この描写は意地悪ですよ。
闇の中で赤ん坊が笑ったのだ。
これを想像すると居た堪れない気持ちになります。登場人物や心理ドラマを単純に面白く味わうことができず、ただ苦しい気持ちになりました。擬似的にこういう感情を味わえる、経験できる事が本、小説の醍醐味であり素晴らしいところだとは思うのですが、出来ればこのような感情を味わう事なく一生を終えたいと、ふと感じずにはいられませんでした。
あともう一つの作品が「踊り子」。これはもう真実を知る事が全て善であるとは言えない、そう思わせる作品です。これはもう書きにくい。書いてしまうと結末が予想出来てしまう。だから書けません(笑)
ここまでのことはあまり無いにせよ、本人には本当の事を告げず、当たり障りのない嘘をついた方が良い場面は生きていると少なからずあります。私は嘘は苦手で、それが結果として良くない方向に向かうと分かっていても本当の事を言ってしまいます。
本人にしてみれば嘘を真実を勘違いしたまま生きている方が楽なのですが、その嘘をついた人間はやはりいくらか重荷を背負い続けて生きていかなくてはなりません。私は自分が楽になりたいから、本人にとって辛い事を言ってしまっているのかもしれません。
しかし、本書の「踊り子」の真実は言えませんね。よくよく考えてみれば要因の一部の責任もあるように見えます。誰が悪いというのはないんです。ないんだけれども、不運な方に物語が転がってしまい、こんな結末になってしまいました。
またまたよくこういうストーリーを生み出せるものです。
他の5つの作品も人の心理がよく描かれており面白いというのは不謹慎かもしれませんが、色々考えさせられるところがあります。
割とページ数はありますが、筆者の筆致と短編集と合間って一気に読む事が出来ます。
色々な作品に触れることはとても面白く興味深いものですので、読んでみては如何でしょうか?