教養・哲学

ホモ・デウス: テクノロジーとサピエンスの未来-アルゴリズムとデータ

歴史からみる人類の未来

前著「サピエンス全史」は一言でいうと、歴史を振り返り、私たち人類がどのようにして現地球の頂点に君臨したのかを、鋭い切り口と巧みな考察により表した、非常に知的好奇心をくすぐる興味深い内容の本です。

今回紹介する本書「ホモデウス」も同じ著者ユヴァル・ノア・ハラリ氏が書いた本で、前作が過去絡みた現在の人類を描いた作品ならば、それら歴史から私たち人類の今後の行く末を考察している作品です。

サピエンス全史同様にハードカバーで上下巻とかなり分厚く読み応えがある書籍です。少し心してかかからないと途中で挫折してしまうかもしれません。が、それは非常に勿体ないと思います。

相当な知識と新しい考え方と優れた考察ではあるものの、一つ一つの事例や著者の考えは難解な事もなく、専門家あるいは少しかじっている人だけを対象とはしておらず、私のような知識が浅い人間にも楽しく読めるような表現がなされています。だからこそサピエンス全史は世界各国で大ベストセラーにもなり本書ホモデウスに至っても数十万部も売れているのだと思います。

飢餓と疫病と戦争を克服しつつある

さて、本書ホモデウスが具体的にどんな内容なのかとほんの少しだけ補足すると、前半は過去の人類にとって最大の敵だった「飢餓」と「疫病」と「戦争」について書かれています。

この三つのとても大きな問題はいつも人類のすぐ横に横たわっており、気がつくと飢餓、疫病、戦争は猛威をふるい大きな傷を私たちに負わせ続けてきました。

しかし、直近ではこれら三つの問題がゼロにはならないにせよ、コントロールが可能な課題となり、予想が出来ず天からの罰といった防ぎようのないものではなくなり、これらを克服しつつあります。

※もちろん今でも飢餓に苦しむ人、疫病に命を奪われる人、戦争の犠牲者はおり、著者もそれらは認識しており本書にも書かれていますが、ここではその数は著しく低くなり、過去のように人間には如何しようも無い問題ではなく、コントロールが可能(人間はしばしば愚かなんので必ずしも過ちを犯さないという訳ではない)で対処できる課題といっている

「不死」と「幸福」と「神性」に取り組む

そしてその大きな問題を克服すると、人間はその空白を埋めるために新たな課題に必然的に取り組むようになります。その新たな課題が「不死」と「幸福」と「神性」です。

いきなりステージが変わり驚きや困惑をされる読者がいるかもしれませんが、これについても丁寧な説明と考察がなされています。

例えば「不死」いうと不死身で不老で死なないバケモノじみた人間を想像するかもしれません。人類の寿命はほんの少し前までは30年〜50年程度でしたが今や80歳を超えることは珍しくもなく、人生100年時代とも言われています。現にこれから生まれてくる世代の平均寿命は110歳とも120歳とも言われています。

もちろん普通に考えるとこのペースで進み続けることはなく、いずれ生物学的に限界である本当の寿命はあると思います。しかし生物が寿命を迎えるのも突き詰めていけば、細胞、臓器の不具合、機能不全です。こう考えれば今後テクノロジーが進化していけば、今よりも更に高い精度で細胞や臓器を治すことも再生することも可能になります。

遺伝子レベルで治療をしたり、未然に病気となる因子を排除、老化さえも遅らせ止めることが可能になるかもしれません。また生まれら段階、もしくは生まれる前の段階で最高の遺伝子情報を持った赤ちゃんだけを選び抜くことも可能です。

ここには倫理の問題が必ず寄り添っていますが、人間はこれに抗うことは出来ません。その理由も非常に明確で納得度も高い。

乱暴な言い方をすると、赤ちゃんになる前のもっと前の段階で遺伝子レベルで劣っていると思われるものを排除、と考えると反発を招くことは必死ですが、例えばなんらかの疾患を必ず持って生まれてしまうと分かった場合は、それを助けるという名目があると、中々否定はしにくくなります。

ではこのケースの場合は、これであればと続けていくことでいずれば良質な遺伝子情報を持ったデザイナーベイビーが生まれてくる。

それは当初は怪我そした人を救う為の技術であったものが、少しずつ形を変えていき、現在の美容整形外科になったように。というようなわかりやすい例えで読者を導いてくれます。

その他にも「幸福」では一体何を持って幸福と考えるのか、ここでの考察と研究結果もかなり衝撃があります。

私は他の書籍でラットを用いた同様の実験を読んで知っていましたが、「幸福」を感じることが本当に「幸福」と呼べるのか、というのはよくよく考えて行かなければ私たち人間は大きく道を外して、ただ快楽を追うだけの存在にもなりかねません。ここは本書を読んで是非考えてみて頂きたいところです。

そして後半ですが、

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