教養・哲学

時をかけるゆとり-圧倒的無意味読書体験

本書の帯に嘘偽りなし

「圧倒的に無意味な読書体験」本書の帯にこのように書かれてありました。どんな本にも読者の目を惹きつけるためにあの手この手で出版社がキャッチコピーをこれでもかとつけるのが習わしとなっている。

多かれ少なかれ誇大広告とも取れるようなキャッチコピーも目にするが、本書「時をかけるゆとり」はそれらとは一線を画している。

嘘偽りなど微塵もなく、本当に「圧倒的な無意味な読書体験」を提供してくれる。本を読むと知的に見えたり、読書をしているだけで「真面目」と言われたり、読書家といえば寡黙で難しい哲学書を読破し世間とは異なる思考を磨き続けているようにも見られる。

しかし本書はそんな期待を見事に裏切る。

教養などは一切身につかないし、思考は全く持って深まることなどない。そればかりか非常に低次元なレベルにまで落とされるといった、読んだ後に何も残らないばかりでなく、大切な何かを見失う危険性さえ孕んでいる。

私が本書「時をかけるゆとり」に出会ったのは、同著者の著書「風とともにゆとりぬ」を読んだからである。「風とともにゆとりぬ」が後に刊行されており、その中で著者である朝井さんが「先に時をかけるゆとりを読んでくれ」的なことが書かれていたので、それを無視して「風とともにゆとりぬ」を読んだ後に「時をかけるゆとり」を読んだ、そんな経緯です。

ここまで書いて振り返ると、なんか私が酷評しこき下ろしているように見られますが、そんなつもりは毛頭なく、「圧倒的に無意味な読書体験」ではあるものの「文句なく面白い」というのが率直な感想です。

全部で23ものエピソードが収録されているのですが、どれも自分の体験を一歩引いた目線で冷静にそれはそれは冷静に描写されているのがとんでもなく面白い。

一つ一つがいちいち面白い。

綿密に練られたコントを見ているがの如く、ボケにボケを重ね軽妙なツッコミが織り交ぜられる。表現がこの上なく馬鹿にしていて(自虐だからこそできる)こんな目線で日常を送っていたら、さぞ目に映る世界が可笑しくてしょうがないだろうと思えます。

短いしどこからでも読めるし、頭を一切使わずに、それでいて高尚だと勘違いされている読書ができるという一石二鳥にも三鳥にも四鳥にもなる作品です。

本を読みなさい、と親から言われるお子様方がいるかもしれませんが、この本であれば楽しく読めること間違いなしです。

ただ一つ欠点としては「読書感想文が書けない」といった程度です。

それは世のお子様方には大問題だ、という意見は受け付けません。

それでは最後に。

私は読書をするときには黄色のマーカーを手元に置いて読んでいます。重要な文章に出会った時にマークしノートに書き写したり後で調べたりするためです。

本書ではマーカーを使うことはないと思っていましたが、唯一マークした文章があったので、それを持って最後としたいと思います。

魅惑のデリケートゾーン

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