小説・文芸

何者-現代人の心の中がくっきりと露わに-

心の中が見透かされる

就職活動に勤しむ大学生達の心情を描いた作品。

この作品を読む年代、立場によって色々を感じることが変わると思う。これから大学生になる人、今就職活動の真っ只中にいる人、企業側の人間、それとはかけ離れている人、SNSを活用している人。

本当の自分と少し背伸びをしている自分。全くの偽りの自分にSNSの中だけで構築している自分ではない何者。理想と現実。

それに焦がれているのも自分だし、等身大そのものもこれまた自分。

本作「何者」を読んで行くと作中の人物に感情移入をしてしまい、同意したり批判したり今の自分に照らし合わせてみたりすると思います。

少し大げさかもしれませんが、自己分析をしたり自分を見つめ直したり、今後自分がどう生きて生きたいのか、行くべきなのかを考える良いきっかけとなる作品だと率直に思いました。

現代だから書けるようになった作品でもあり、ところどころに作中の人物がツイートをしている表現があり、そこに書かれていることと、実際他人に見せている行動や言動、心の中で思っていることが透けて見えるのが特徴的です。

それぞれの人物を鳥瞰してみることができ、表面上の関係性と実際とのギャップをどこか他人事のように、世の奥様方が近所で集まって誰かの噂話をするように、自分は安全な場所にいてそれを面白おかしくみていくことができます。

と思いきや、一気に汗がひき目の前に現実を突きつけられ逃げ場がなくなる展開に出くわす。

そして本当の読者自身も過去の自分の行動を振り替えざるを得なくなる。特にSNSのアカウントを持っている人は使い方を見直す人が続出するような。

こういう作品を読むと今の自分の考え方と行動も見直す良いきっかけとなり、下手なビジネス書を読むよりも非常に価値があると思います。

小説として楽しめるだけでなく、現実の身の振り方を実際に変えられるかもしれない。

朝井リョウさんの作品はいくつか読みましたが、直近は非常にふざけた(悪口ではなく、私の中では大賛辞)作品ばかり読んでいましたが、その時も非常に人間の機微を感じ取り、描写がとても素晴らしいなと思っておりましたが、それらが真面目に具現化されている作品でした。

面白かったです。

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タイトル:何者 (新潮文庫)

著者:朝井 リョウ 

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